Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

心地良い鞭と拘束具(その1)

『20世紀最大の魔術師』と呼ばれるアレイスター・クロウリーは膨大な著作を残したが、その多くは難解であり、生前に残した数々の伝説や武勇伝(奇行)も相俟って、彼の業績についてはとかく妙な誤解や神秘化が付きまとう事が多い。
しかし細部は兎も角として、その著作の中で一貫して主張している事の骨子は、彼につきまとう不道徳・反社会的イメージとは違って非常に単純明快かつ健全で常識的なのである。
その骨子とは1)人間にはそれぞれ固有の性質や得手不得手がある、2)人間は1)の性質と運命・環境によって為すべき事や為したい事を持つ、3)2)の事を成し遂げる為には1)を踏まえて効果的に力を集中すべし、の3点だ。それらは『法の書』の「Every man and every woman is a star.」「Do what thou wilt shall be the whole of the Law.」「Love is the law, love under will.」という3つの文章に要約される*1
「そうか!じゃあ『法の書』は怪しげな自己啓発書の類なのか。」と思った人、貴方は正しい・・・と書くとOTO関係者から袋叩きに遭いそうなので「半分は正しい」としておこう*2。あとの半分が何かというと『love under will』意志の下の愛なのだ。これこそがしょぼくれた『個人の自由』を奪う縛鎖であると同時に人間を真の自由へと導く蜘蛛の糸でもあるのだ。(続く)

*1:勿論ここで述べている事がThelema思想の中核を為すこの3つの文の解釈の全てではない。しかし本筋を外してはいない、という自信はある。

*2:『法の書』も所謂自己啓発本も、社会の中で、人と人との関わりの中で、より良い生き方を目指して行こうという点で共通のテーマを持っている事は否定できない。『魔術−理論と実践』の序文でクロウリーが想定する読者として銀行員やボクサーなどを挙げているのは冗談でも単なる宣伝文句でもなく、魔術があらゆる人達が向上する為の『道』として有効であると彼が本気で考えていたからなのだ。