Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

心地良い鞭と拘束具(その3)

「馬鹿者どもに愛を見誤らせるでない。愛といってもいろいろあるからだ。鳩もいれば蛇もいる。汝らが良き選択をされんことを!」(『法の書』Ⅰ−57)
『愛』によって調和を得るといっても、調和とは一意に決まるものではない。程度の低い妥協もあれば、個々の利害の調整を経て苦労に苦労を重ねてようやく得られる調和もある。求められる調和は目的、即ち『意志』によって大きく変わる。
全ての人間が己の『真の意志』に目覚め、星々として空間の女王ヌイトの『愛』による調和の下にそれぞれの軌道を進む時、初めて真の自由は訪れるのだ。*1
とはいえ人間の『真の意志』というものはそう簡単に判るものではない。下手をすると一生かかっても見つからないかもしれない位のものだ。しかし手探りで真の『意志』の下の『愛』を探す為の方法が無い訳ではない。
クロウリーは『第3の書、もしくは掟の書』*2の中で、自由を獲得する為の方法として、「『そして』『その』『しかし』などのありふれた言葉使わない」などの、自分に合った様々な禁則を作り出し己に課す事を勧めている*3
コレは『法の書』に書かれている『愛の為の分裂』*4を意識する為の訓練なのだ。ロミオとジュリエットの愛の強さが2人の家同士の対立によってより輝くように、己を規則で拘束する事によって自分の性質が顕わになるのである。
(続く)

*1:例えば、『魔術−理論と実践』の「序」の三、≪一般原理≫の(七)を参照。

*2:『魔術−理論と実践』付録VII収録。

*3:禁則を破った場合の罰則としてクロウリーが決めた「剃刀で腕を切る」というのはヤリ過ぎ、という意見が多いので、ここも自分に合った罰則を作ると良いのだろう。

*4:錬金術的な分解と再構成と解釈する事も出来るだろう。