Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

補遺その二 「びんちょうの書 および萌人格を用いた幻視の実践について」

四 既存象徴体系との整合

ここでは黄金の夜明け団の象徴体系と整合例を示す。
びんちょうタン』の世界は日本的な豊かな山の自然の生命力に満ちた世界であるが、地上を離れた高次の霊的階層構造に関する描写はない。また主要登場人物である四人の娘達は地の象徴である炭をそれぞれ纏っている。よって目的地となるのは、月下の世界、時には成仏できぬ霊や魑魅魍魎が跋扈する所謂低次星幽界の世界であり、四人の娘達はマルクトの四大元素およびタロット・カードの四枚の王女に対応させる事が出来る。
個々の対応は以下の通り。

  • 火  れん
  • 水  びんちょう
  • 空気 ちく
  • 地  クヌギ

四者の内、熱=活動的=火と空気の属性を持つ者がれんとちくであり、冷=受動的=水と地の属性を持つ者がびんちょうとクヌギである事は、これら四人の性格から比較的容易に判断できる。
れんは、その強力な直感力と霊を成仏させる霊的な力、および四人の内で年長者たる事により、最も霊的で根元的な元素である火に割り当てられる。また練炭は燃料として作られた炭である事もその属性と合致する。
びんちょうは、その力の根元である備長炭の高い浄化能力、及び人魂を掴んでポイするなどの特殊能力から浄化の元素、水の属性が割り当てられる。山に棲む水の元素霊の眷属たるあめふらしが彼女の友人である事もこの属性を補足する。彼女は日本の自然の生命力の根元である、山に降り地中で浄化され下界に注ぎ流れる水の力の精霊である。そしてそれ故に、その水の恵みが結集した穀物である米を供物として求める。彼女が下界に居りて仕事をして山に帰り、時には空を飛ぶのは、水の大循環とそれによって生かされる人間社会を暗に示している。
ちくは、その姦しさと知的能力の高さ、およびその気紛れな性質から風に配属される。また、彼女の祖父は漢方の薬師であり、その成分はしばしば特徴的な臭いを持つ事もこの配属と合致する。更に竹炭が燃料には用いられず高い脱臭・消臭・除湿効果を持つ事も空気との関わりの深さを示している。もう一つ付け加えれば竹炭の電気伝導性は言葉を伝える空気の性質とも共通している。
クヌギは地の富の結集たる財力と屋敷に囚われる不自由さ、および昆虫を惹き付ける事から地に配属される。クヌギ炭が茶道において見栄えの為に樹皮が付いた状態で使用される事も、彼女が地の属性である事と合致する。
また、この四者の元素的属性をより純化させるとびんちょう音頭*1と呼ばれる特殊な周行を行わせる事が可能になる。これは黄金の夜明け団に於ける『這い回る竜の術式』に対応するものであり、ウバメガなどのより高次の存在から力を授受する際に使用出来る。
マルクトの四大元素は、特に地以外の元素は純粋な元素ではないので、上記の四者の配属は場合によっては交換可能である。特にびんちょうは最も火力の高い備長炭を身につけ、空を飛び、山で生活をしている事から、水のみならず四大の全てを統御しているとも考えられる為、処女神としての世界の乙女、アニマ・ムンディと見なす事もできる。
その他の人格については以下の通り。
あろえは、髪が硬く水を沢山必要とするという特徴以外は「へいぼん」がその主たる属性であること、また登場人物としての重要度が上記四人より劣ると判断した為四大から除外した。象徴として使用するならば密儀を受けていない『人間』であろう。
ちく(タン)の妹ちく(リン)はちく(タン)の眷属として考える。
アベマキはクヌギとほぼ同属性である為、クヌギの眷属と見なせる。
ユーカリやえるかぴ(たん)は共に異邦人であり特にえるかぴ(たん)は地球上の生物ですらない事*2、及び登場人物としての重要度もあろえやちく(リン)よりも更に低い事から、四大からは除外する。
その他の登場人物については必要が無い限り単なる脇役として扱う。

*1:http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000E0VRPI/

*2:えるかぴ(たん)はゲブラーの天球に棲むと言われる。http://www.planetary.or.jp/2003_mars2003.html