Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

『篦棒な人々―戦後サブカルチャー偉人伝』竹熊健太郎、他著;河出文庫*2

クイックジャパンに連載された伝説のインタビュー集が文庫になった。
昭和のサブカルチャーの形成に絶大な影響力を及ぼしながら表立ってその業績が語られる事が殆どない4人の伝説の巨人へのインタビューである。

内容については私のような拙い文章力の持ち主が紹介できるようなものではない。是非とも本書を手にとって読んでいただきたい。
敢えて言えば、彼ら4人の生き方に共通するのは徹底したアナーキズムである*1、という事であろう。戦前、戦争、戦後という動乱の社会状況の中で、彼ら自身の『生』を貫き通した結果が、世間を沸かしまた惑わす興業プロモーターであったり、子供を夢と空想の世界に大人を官能の世界に導く超売れっ子絵師であったり、歴代首相の政治顧問もこなす芸能界の闇の帝王であったり*2、思想的変質者として警察にマークされるストリーキングの第一人者の世捨て人であったりした*3訳である。
だが、彼らは単なる我が儘な人間達ではない。己の『生』を追求しながらも、彼らなりの流儀で『自分』という存在をわきまえ周囲の人々や社会との間にきちんと折り合いを付けていた事がインタビューから伺える。彼らは既に存在そのものが『魔術的』でありそれぞれの『意志』の体現者であると言えるだろうが、その秘訣はその辺りにあるのであろう。
現時点では故石原豪人氏以外の3人はまだ存命であるが、彼ら巨人達の『生』がその最後の最後まで輝くよう祈念しながらこの駄文を締めくくることにする。

*1:頭で考えた無政府主義でなく、己の内面の衝動こそが第一の基準であるという意味で。

*2:川内康範氏は最近、森進一との『お袋さん』を巡る騒動で世間を賑わせたが、世間が認識しているのはその業績のごく一部だけのようだ。

*3:1970年代にストリーキングが一種の儀式として流行ったのはこの人の影響なしには考えられない。作者の『生』の感覚を他人に伝えるだけでなく行動にまで駆り立てる力は当に最高の芸術のみが持つものだ。しかしダダカン氏の業績は、本書によればごく一部の人々を除いて日本の芸術界では芸術扱いされてないらしい。私は日本の芸術界というのは頭の硬い拝金主義者の集団だと思っていたのだが、この本を読んで、それ以前に人間としての基本的な知性というものが欠落した人達の集団なのだ、と認識を改めた。