フローティングタンク（アイソレーション・タンク）体験

先日、某所のフローティングタンクに入る機会があった*1ので、メモと感想を兼ねて記録しておく。
フローティングタンクと言えば映画アルタードステーツに出てきたような『感覚遮断』による『神秘体験』が簡単に起こるように喧伝されている向きがある。しかし、タンクの持ち主も言っていたが、過剰な期待は禁物だと思う。
フローティングタンクで得られる感覚を一言で言えば、目を瞑って海に浮かんでいる感覚、である。比重の重い塩化マグネシウム水溶液に入って浮いているのだから当然と言えば当然だ。死海沿岸が高級リゾート地である理由が良く判る*2、浮遊感覚の気持ち良さが味わえるのが最大のメリットであろう。
そして、万人に共通して言えることはソレくらいなんじゃないだろうか、というのが率直な気持ちである。
『感覚遮断』とはいうものの、確かにライトを消すと真っ暗になって視覚は遮断されるが、水滴の音が耳栓を通して聞こえてくるのが結構気になる。液体の上を漂っている感覚は、最初は怖いが慣れると気持ちが良い。しかし手などが壁にぶつかった時の衝撃が気になる*3。
また元から内部感覚の強い人はあんまり感覚が遮断された気がしないように思う。感覚器からの信号が減る分、逆に呼吸音とか心音とか内臓の感覚とかが気になるだろう。深い瞑想やヴィジョンを見ようとしたらそれらの内部からの雑音を消さねばならないが・・・フローティングタンクの中でそれらの雑音を消すには、先ず、タンクの中での身体制御に慣れる必要がある。通常の地面や椅子などの上で行う為に作られた瞑想の姿勢は、タンクの中では役に立たないからだ。下手に手や足を組むと引っ繰り返ったり回転してしまったりして、濃厚な塩化マグネシウム水溶液を顔面一杯に味わうハメになる。これが結構目に染みる。*4
色々とタンクの中で姿勢を試してみたが、私の場合、普段の仕事で肩が凝っている*5せいか、赤ちゃんのオムツを替える時のよう万歳のポーズが結構安定していた。或いはその状態から手を頭の後ろに組んだ状態が一番安定していたかもしれない。
試行錯誤の末に、姿勢が決まってタンクに慣れてくると浮遊する気持ちよさが体内の雑音を上回ってくる。逆に、起き上がる為に足裏をタンクの底に付けた途端に頭の中が日常の意識状態に戻るのがまた面白い。現実的な感覚を身につけることを「地に足を付ける」と表現するが、その意味を実感出来る。*6
体の筋肉が姿勢を保つことから解放されるので、弛緩の感覚を掴むには非常に良い体験になると思う。ただし前に述べたように、通常とは安定する姿勢が大きく異なるので、あくまでも「感覚を掴む」ことに限定しての話ではあるが・・・最初に一度体験すると後の進歩も早いだろう。また、終わった後は体が緩んだような感覚があるので、体の感覚を戻す為にストレッチとかヨガを行うスペースが欲しいが・・・どっかの健康ランド辺りにでも設置しない限りは無理だろうなあ・・・
さて、集中ができて体内の余計な雑音を取り除く事ができれば、ヴィジョン系の瞑想はかなりやりやすい*7。アストラル体投射も、タンクの外がイメージできればかなり楽に出来る*8。ただし、中央の柱のような系統は前述の姿勢の問題があるので駄目。
そんな感じで、先日は上記のようなことを試しつつ、浮遊感を楽しみながらダラダラと浸かって遊んでいたのだが、気がついたらお腹が減ってきた。朝食昼食が軽めで且つタンクに入ったのが夕食前の時間だったので最後は少し気持ち悪くなってしまった。タンクの持ち主によれば、結構お腹が空くので、普通の瞑想などと違って絶食はしないである程度食べてきた方が良い、とのこと。次に来る時はそうしよう。
長くなったが、まとめ。フローティングタンクに初めて入る人は、期待しすぎず、気楽に、海水浴とか温泉に骨休めに来る位の感覚で良いと思う*9。運が良ければ意外な発見があるだろう。

*1:場所については５月23日のFraterCSさんのダイアリーをご覧下さい。

*2:死海には一度で良いからいってみたいなあ・・・

*3:アンカーみたいな位置を安定させる道具があるともっと集中し易いかも

*4:タンクの内部に霧吹きがあるので、それで顔を洗う事が出来る。だが、そういうのが苦手な人はゴーグルを持参した方が良いかもしれない。

*5:肩凝りの人の為に飛行機の中で使う枕のような首用浮き輪があるので、頭の位置に不快感がある人は試してみると良いだろう。

*6:ケネス・グラントの「魔術の復活」で足の裏の霊的中枢について言及する記述があったが、その観点から、足裏を付けない東洋の結跏趺坐や蓮華座と、足裏を付ける西洋魔術の神の姿勢の違いについて考察してみるのも面白いかもしれない。結跏趺坐や蓮華座には、足の感覚を擬似的に無くす事で擬似的に浮遊していると脳が感じる状態を作り出す効果があるのかも・・・

*7:ヴィジョンが沸いてきたのでその流れに乗ってみたら、最後は良くある自己犠牲、生まれ変わりのヴィジョンだった。生まれ変わった姿がエヴァンゲリオンの主人公シンジ君のプラグスーツ姿だったのは何で？実際の私は脂ぎった性格の悪いオッサンなのだが・・・浄化されて真逆の存在になったということか？

*8:方法にもよるだろうが、「月の分裂」のようなアストラルボディを外部にイメージして意識を移すやり方だと、体の外を意識できるポイントが必要なのだ。タンク内は狭く且つ明かりを消すと真っ暗なので、タンクの外から自分の方向を見て立つイメージの方が、少なくとも私にとってはやり易い。

*9:携帯音楽プレーヤーもちこみ可だそうだ。リラックスしながら好きな音楽を聴くのも良いかも。