Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

『インターステラー』観た。

インターステラー

インターステラーとは編集

コアなSFファンのみに話題の映画『インターステラー』見て来た。岡田斗司夫がこの映画を大変誉めていた動画を見たお陰でギリギリ劇場で観ることが出来て良かった。
ストーリーに関する感想や不満はツイッターに書いたので、此所ではネタバレを含めたオカルト話について書く。
回転する宇宙ステーションと宇宙船とのドッキングシーンとか『2001年宇宙の旅』へのオマージュっぽいシーンが沢山有るけど、土星の軌道にあるワームホールを使って外宇宙へ行く、というのは明らかに『2001年』の『スターゲート』へのオマージュだ。
ところで、この『スターゲート』だが、土星の前にある異次元への扉と言えば・・・そう、カバラの『生命の木』で言うところの偽セフィラ、Daathそのものである。
西洋占星術では肉眼で見える最も遠い惑星である土星の向こう側は恒星天なので、土星が遠い星々と我々の世界との間の境界である、というある種普遍的なイメージの反映なのかもしれない。しかし、そこにある種のゲートを置く、というのは何か類似の考え方があるようにも思える。
Daathを通って『深淵』を越え、通常の限界を超えた領域へ行く、というのは多分クロウリーが広めた概念*1だと思うが、『インターステラー』は兎も角、その元ネタの『2001年』の原作者A.C.クラークを含めた映画スタッフ達がクロウリーをどの位意識していたのかは判らない。*2
ただ、その概念は、当時のヒッピー世代にとってはある意味、常識だったのかもしれない。例えば往年の名作RPG、"Wizardry"の超マニア向け続編"Wizardry IV: Return of WERDNA"のTrueエンディングへ向かうルートの途中、地下11階が『生命の木』の形をしたマップであり*3、しかもDaathに相当する部屋で特殊アイテム"Void Transfer"を使わないと先に進めない。これらの謎については、1作目から3作目までも含めて、ゲーム中ではほぼノーヒントであり、ランダムで出てくるヒントに、ユダヤ人のカバラについて勉強しておけ、という示唆が出てくるだけである。"Wizardry IV"は超マニア向けの作品であるが、どう考えてもコンピュータ産業創生時のアメリカ西海岸のプログラマー達はこの位のオカルト知識を持っている、ということが前提条件で作られているとしか考えられない*4。『2001年』、そしてそのオマージュである『インターステラー』も、その文化の流れを受け継いでいるのではないかと思う。
残念ながら『インターステラー』はハリウッド的なあざとい演出が災いして、21世紀の『2001年宇宙の旅』には成り損ねてしまったように見える。これまでのオカルト文化の流れを継承しつつ、これからの新しい世代の心に響く名作の登場を願っている。

という訳で、円盤が出たら買うので早く出ないかな。

*1:GD魔術とクロウリー・Thelema魔術で『深淵』の扱いが違うのは、古代の世界観を元にしたGDと近代的世界観を持ったThelemaとの考え方の違いによる、座標軸の取り方の違いである。GDは、理想の世界たる天界から神聖なるものを現実の地上に降ろす、という考え方であり、理想の世界と現実の世界を隔てているのが『深淵』である。だからGDの体系では人間は生きたまま『深淵』を越えられないのだ。しかし近代的な思想では、世界とは、人間が科学的に正しく理解し合理的に行動することによって、正しい方向に向かって動かせるものである。個人の感情や欲望を越えて合理的に動ける人間になることは、例えば僅かな時間の間であれば、誰にとっても不可能なことではない。また、政治家などの公人は本来そのように行動すべき役目を負った人間である。Thelemaにおいては、理想的な合理的人間になることによって個の生物としての枠を超えることが『深淵』越えなのである。『インターステラー』においても個の生物としての感情と人類を救う理想との相剋が重要なテーマとして出てくるが、ハリウッドはアメリカ西海岸の文化の影響を大きく受けているので、どこかで繋がっている可能性はある。

*2:この記事は世代とかあんまり考えずに適当に書き散らかしたものだけど、この映画とオカルティズムについては昔から色々な考察があり、A.C.クラークフリーメーソンの高位階(第33位階?)であった、という(怪しい?)情報と絡めて語られる事が多い。クラークは真っ当な科学のみならず超常現象にも強い興味を持っており、I.Regardieの10歳年下の世代であるから、若い頃にクロウリーやレガーディーの本の初版を読んでいた可能性があるのではないかと思う。ファンタジー幻想小説の分野にはガチのオカルティストや彼らと交流を持っている作家が多いが、そのお隣のSFの世界も似たようなものである。日本の魔術界もSFやサイバーパンクが大好きな人が多いのでかなり親和性があるのだろう。

*3:しかも各セフィラに相当する部屋において、そのセフィラと人体の部分との対応を回答しないと先に進めず、更にケテルの向こう側で"Tree of Life"と回答する必要がある。

*4:Wizardryの第一作は1981年、IVは1987年に発売されているので、1960年代以降のオカルト・リバイバルに乗って再刊された本を読んだ世代が作っていると思われるが、文化というものは全く土壌の無いところには根付かない、という事を考えると何らかの下地があったと考える方が良いと思う。