Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

真の名前について3

魔術や呪術に実効性はあるのか?というのは結構難しい問題であり、下手をすると魔術的世界観という百家争鳴の主題について果てしない論議を続ける事になりかねないので、ここでは深入りはしない。
しかし、少なくとも魔術では『物体が空中に浮く』というような自然の法則に反するような現象は起こす事が出来ない、というのはよく言われている事だ。例えば護符などを用いた願望達成術などが上手く行く時には、事前には無理な目標に見えても、あたかも水が上から下に流れるが如く、求めた結果に繋がるような因果の連鎖が順次起こっていくのである。
その様な因果の連鎖を起こす為には、アレイスター・クロウリーが『魔術−理論と実践』*1で述べているような『魔術の輪』即ちある種の関係或いはリンクを形成しなければならない*2。そしてこのリンクの形成の為には対象物の性質および対象物と術者との関係について論理的または直感的な理解をしなければならない。何故ならその理解無しでは適切な魔術的手段を選び出す事もできないからである。例えば護符を作成するにしても、どの惑星や天使や元素霊の象徴がこの問題に相応しいか?という事を考えなければ術のフォーカスが絞れなくなってしまう。
その為、多くの魔術書では願望達成術を行う前に問題の分析をする事を勧めている。占術も問題の直感的な理解の一手段として使う事が出来る。このような作業はその後に行われる魔術儀式などと比べると地味であるが、単なる準備作業と思ってはいけない。寧ろ術の対象となるモノを支配する『真の名前』を知る為の最も重要な作業なのだ。
世の中の問題の多くは、ちょっとしたボタンの掛け違い、食い違いによって生じ、次第に複雑になっていく事が多い。従って対象物の性質を正しく捉えつつ問題解決に相応しい関係を見つける事によって、そういった問題の殆どは解決してしまう。後の儀式はきっかけと決心の後押しをするだけである。
護符魔術であれば、術者と術の対象物との間の関係に相応しい『真の名前』=「そのモノの性質を適切な言葉で表したもの」を護符に刻み込む事により、術者の問題に対する理解もより深く心に刻み込まれる。後はその理解に従って行動するのみだ。

この文章では主に『真の名前』の一般論と、願望達成術を例として魔術実践に於けるその重要性について述べてきた。しかし、最初に例に挙げた古代エジプト人やケルト人の持つ『真の名前』、そして魔術師達が持つ魔法名などについては、やや違う面からの考察が必要なのでここでは言及しなかった。それについてはまたいつか改めて論じる事にする。
(真の名前について、了)