Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

日本魔術界滅亡への序曲

法の書の「すべての男女は星である。」という一節を持ち出すまでもなく、近代以降の魔術は実践するものの個性を重んじる世界であり、それ故に魔術実践者は他人の「真の意志」を尊重する為に干渉を嫌う傾向があるように見える。
特に混沌魔術の流行以降は更にその傾向に拍車がかかっているように思う。

同じように、日本の魔術実践者、魔術ファンも「他人には出来るだけ干渉しない事が良い事」と思っているみたいに、2chの魔術関係スレッド辺りを見ると思える。
だが、少なくとも日本においてはそれが本当に「真の意志」を尊重する事になるのだろうか?

江口氏や秋端氏の世代には「実践魔術を日本に根付かせる」という大きな、そして明確な共通目的があった。そして、たった10人にも満たない人数で、仕事の片手間でありながらあれだけの出版活動を成し遂げた。それは彼らの「真の意志」の発現ではなかったのだろうか?

しかし、まだまだ日本において魔術は文化としてきちんと根付いた訳ではない。
基本文献もまだまだ不充分だし、魔術の実践を生活と結びつける事が出来ている人も殆ど居ない。江口・秋端世代が達成した事を継承し、更に発展させていかねば日本に魔術という文化が本当に根付く事は無く、あの世代がいなくなれば早晩消えていくだろう。
事実、彼らの魔術界での活動量が落ちた90年代以降、80年代にあった日本の魔術団体は次々に消滅、又は活動停止の状態に陥っている。

しかし、歳を取ったあの世代に今以上の事を求めるのは虫の良すぎる話である。

日本魔術界が滅びない為に必要な事は、如何にして彼らの作り出した環境を受け継ぎ、更に発展させていくのかというビジョンと戦略であり、その戦略に基づいた魔術界全体の共通目標なのではないだろうか。
その共通目標が無ければ、個々の魔術ファンの意識がバラバラになる事によって、江口・秋端の世代が先頭に立って切り開いた出版状況や人脈や交流およびそれらによって生み出される情報ソースは徐々に消えていき、一部の者だけが外国の魔術結社の日本支部会員として細々と活動していくだけであろう。

それが日本の魔術実践者達の「真の意志」という事であれば仕方が無いのかもしれない。(私にはどうでも良い事なので積極的に何かをする気はありません。)

もしもカリスマ性を持って楽しく皆を導くヒーローがいれば状況は変わるのかもしれないが、危険でもある。まあ何事も滅びる時は滅びるという事で、これからの日本魔術界の衰退を眺めながら魔術を楽しむのも一興かもしれない。