Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

魔術師のモデル

人が未来に向かって行動する時には『理』が必要である。先が見えない状態で闇雲に動いても無駄な努力に終わる事が多い。効果的に動く為には、何らかの形で目的となるものの成り立ちを理解し、「こうであるが故に、ここをこう動かせばそこが変わる」という方法論を打ち立てる必要がある。しかし、その方法論は前提となるモノの成り立ちが変化してしまうと変わらざるを得なくなる。
例えば1960年代の学生運動においては、社会の中の富の配分の不公平と利害の関係者にしか開かれていない政治に対して将来の生産者である学生が団結して戦うという事には意味があった。右肩上がりの将来を人質にとって分配のルールの変更を要求する事は、その時代における問題の解決に繋がる可能性が大きかったからだ。
しかし、若年労働者が減り社会全体が徐々に活力を失って行っている現在の日本では、切込隊長が言うように貧乏人同士が団結して何かを要求するという事には昔程の意味は無い*1。何故ならば近い将来確実に社会全体の富も生産力も低下していき、資産を持たぬ者は今以上の影響力を持てない、と言う事がハッキリしているからである。今必要な事はこれからの社会を支える新しい富を生産することで、その為には試行錯誤が必要なのだが、世間では何故か後ろ向きなコスト削減ばかりがもてはやされる。先細りにならない為にも、一刻も早く新しい社会のモデルを作り上げる為の試行錯誤が必要なのだ。
日本における魔術についても同じような事が言える。以前のエントリ*2にも書いたように、現在の大御所達が導入した魔術はまだ実践レベルでは根付いておらず、早晩、自然消滅が予想される。その理由の一つとして、19世紀末に作られたGD魔術は知識面実践面共に日本人が習得するには色々と文化的なハードルが高い、という事が挙げられるだろう。
日本魔術界の今の課題は、翻訳などによって情報を増やして全体の底上げを計ると同時に、現代の日本人が入って行きやすいような世界観に合わせた魔術師のモデルを打ち立てる事だ。それは日本人で魔術に関わる者一人一人の試行錯誤の積み重ね及びその情報の集積と共有によってのみ可能となるものである。
そのうち天才が現れれば新しい魔術師像をまとめてくれるだろう*3。私のような凡人に出来る事は、その日を信じて積み上げていく事だけだ*4
しかし、私の様な凡才単独では例え寿命が2万年あっても次のモデルを作れるだけの結果を積み上げる事はできない。さりとて私よりも遙かに才能のある人達がそういう作業に殆ど手を付けていない、という現状を鑑みるに、やはり日本魔術界の滅亡は必然なので無駄な足掻きは止めよう、と思う今日この頃である。

*1:http://column.chbox.jp/home/kiri/archives/blog/main/2005/04/10_053833.html 毎日新聞の記事はコンビニで買って読んだけど、面白みに欠ける位真っ当な記事だった。しかしソレを読んで「試行錯誤」を否定し「団結」を訴えてくるオヤジ共は・・・所謂『団塊の世代』は、団結して要求すれば何でも貰えると思っているように見えてしまう。勿論その世代でもこちらが尊敬出来る人は寧ろ必要以上に責任を負ってしまいがちの人ばかりなのだけれど、その他圧倒的大勢は群れて文句を垂れるだけ。ウチの職場でもタダ集まって文句を垂れるだけの年寄りばかり。ツカエネー。

*2:http://d.hatena.ne.jp/Hocuspocus/20041014

*3:そのような天才の具体例として、次回のエントリではエリファス・レヴィを取り上げてみよう。

*4:インターネットはその為のツールとしては非常に便利なものだ。