Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

電波大戦 ぼくたちの”護身”入門(本田透著、太田出版)*6

世の中には如何にして「モテる」ようになるかについて書かれた本が氾濫しているが、この本は逆に、オタクが「モテない」ようにする為に如何にして『護身』すべきか、について書かれた本である。
恋愛資本主義に毒された負け犬女達をバッサリと切り捨てた前作「電波男*1の「ライブ盤」、と著者は自らのWebページ*2で語っているが、著者のWebページや「電波男」を読んだ事の無い人間にはどんな本なのか想像も付かないであろう。
その答えは巻末の特殊翻訳家柳下毅一郎*3の解説にある。「つまり、オタクにとって恋愛とはいかなるものなのか、ということなのである」*4。柳下氏は、オタクは単なる趣味ではなく生き方であるが故に恋愛や結婚との両立は困難である、と分析する。
実はこれは、ディープな魔術オタクが人生に於いて遭遇する最も重要な問題でもあるのだ。私の知り合いにも離婚を繰り返す中年魔術師は少なくない。そして、明確な解決策をセンパイ魔術師達から聞いた事は、少なくとも私は一度も無い。この本は、その問題について考える為の材料を提供するであろう。
また日本だけでなく世界的にも魔術界の人脈はサブカルやSFとかなり密接な関係があるのだが、この本に書いてあるような恋愛関係に救いを求めるメンヘル者やサークルクラッシャーの存在もサブカル界と一緒である。寧ろ精神的に危うい人の割合は魔術界の方が多いだろう。団内恋愛で崩壊した嘗てのカリフォルニアO.T.O.アガペー・ロッジの例を出すまでもなく、オカルト集団やサークルの中では、こういった人達に(特にリーダーや指導者達は)注意すべきである。良く知らなければ、この本を読んで『護身』を学ぶべし。
それにしても「人の不幸は蜜の味」というか、登場するメンツがオタク・クリエイターの中のオタク・クリエイターとも言うべきメンツだけに、(当人にとっては絶対に笑えない)壮絶修羅場エピソードと暗黒の苦難の日々によって得られた「金言」の数々が素晴らしいエンターティメントとして次々に展開される様は圧巻である。特に喪男で且つ人間性が歪んでいて有名に成るような才能が皆無の私のような人間にとってはページをめくる度に他人事として大爆笑できる。お陰で素晴らしい午後の一時を過ごさせて貰った。