Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

『振動』についての覚え書き

先日の銀座のトークショーの際に行われた魔術儀式の実演者の『振動』について2chなどでもちょっと話題になったようだ。『振動』のやり方については術者毎に十人十色であり、且つ、かなりの魔術実践の手練れでも常に悩む問題であるので、総論を述べるのは非常に難しい。
だが、儀式を実演するのならば『振動』は避けては通れない問題である。
『振動』の基本は、お経や多くの宗教音楽がそうであるように、低音を発し鼻腔を使って倍音成分を響かせながら視床下部を刺激する事である*1
それを踏まえた上で、更に儀式中に感じるバイブレーション、感情、思い、そういったものを、リズム、抑揚、トーン、強弱、吐息、吸気、etcを使いながら表現すると儀式の印象が全く変わってくる。更に儀式中の普通の台詞についても、『聖なる言葉』を引き立てる範囲で*2、抑揚やリズムを付けると儀式の流れがより明確に表現できる。
ただし、そういった『脚色』は、上手く行けば『指輪物語』の魔術師サルマンの演説のように人々の心を虜にするが、失敗した場合や場の雰囲気に合わない時は逆にあざとく感じられて、他の儀式司官や参列者の要らぬ反発を招いてしまう。また声やフィーリングは個人の差が大き過いので、単純に他人の真似をしても同じように出来ず却って逆効果になる事も往々にしてある。そういったリスクを避ける為に『振動』に余計な脚色を付けず『お経』に徹するのも一つのやり方ではあろう。
だが、例えばギリシャ正教の儀式中に流れる男声コーラスなどを聞いてしまうと、音が人の心にもたらす絶大なる効果を何とかして利用したい、などと思ってしまうのが人情ではなかろうか?
『振動』の習得と上達については、自分の才能と好みを見極めた上で自分に一番合っているスタイルを模索していくしかない。その為には魔術書を読むだけでは駄目で、色々な音楽*3や朗読あるいは映画や演劇などを見聞きしつつ、音や言葉に『思い』を乗せていく方法を自分で研究し練習していく以外に道はない。早い話コブシの効いた『振動』が好みならば、カラオケ屋に行って演歌の練習をすることが重要な魔術修行となるのだ。
ところで、色々なところで「日本魔術界にはオタクが多い」という事を聞くのだが、イベント好きな魔術師が居たらアニソン・カラオケ大会なんかを修行と親交の場を兼ねて開催するのも良いのかもしれない*4、などと思う今日この頃。

*1:参考:http://www.tatsu.ne.jp/i/haishin/k-27.html ホーミーのように金属音がするまで倍音成分を響かせることは、出来れば便利だが、必須では無い。

*2:神名やエノク語といった『聖なる言葉』は儀式のキーとなるものなので、これが印象に残らないようでは儀式を行う意味が半減する。

*3:私の最近の好みはブリティッシュプログレの裏番長Van Der Graaf Generatorだ。Sex Pistols(或いはP.I.L.)のJohn Lydonに絶大なる影響を与えたPeter Hammillの狂気と感情がてんこ盛りのヴォーカルは素晴らしいの一言に尽きる。もしも興味を持たれた方がいたら、名曲『Refugees』の入った2nd『The Least We Can Do is Wave to Each Other』かVDGGとメンバーが同じHammillのソロ作『Fool's Mate』、または元祖ブリティッシュ・パンク『Nadir's Big Chance』(John LydonとGlen Matlockの愛聴盤で『Anarchy in the UK』の元ネタ入り)をお勧めする。VDGGの代表作『Pawn Hearts』は長い曲しかないので初心者向きではない。

*4:某団体では実践しているらしいですが・・・