Tweiiter of Hocuspocus_Mage The Starry Abode

『サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 上下巻』相原コージ&竹熊健太郎著;小学館

言わずと知れた、1980年代後半から1990年代前半のビッグコミックスピリッツ黄金期に連載された不朽の名作。通称サルまん*1。漫画の描き方入門の体裁を取ってはいるものの、単にそれに止まらない、空前絶後の漫画創作論であり漫画業界批評でもあるギャグマンガである。
相原、竹熊、両氏が漫画に関わるプロとしての全てのノウハウと知見をつぎ込こんだ作品であり、己のケツの穴を全開して余す所無く撮影しグーグルで全世界に公開するような気迫が全ページから感じられる。これは、漫画に限らずあらゆるクリエイティブな職業で日本語が読める人全員が読むべき本である。少なくともこの本を読まずに漫画の批評や創作論を語る奴はモグリ以外の何者でもない。線の描き方から業界との付き合い方まで幅広く網羅しているが、特にアイデアの出し方に関する記述は、この本に収録されたコラムや裏話も含めて、他に並ぶモノが無い程質が高い*2。そして何よりも、クリエイティブになる為に最も必要な事、己のケツの穴を全開にして公衆に晒す覚悟の大切さをこの本は教えてくれる。
・・・え、魔術と関係ないじゃないか!って?
・・・一瞬でもそう思った奴は魔術なんかさっさと止めた方が良いと思う。魔術師とは時間と空間のクリエイターだからだ。
以下、幾つかのポイントについての個人的メモ

  1. 構図のパクリの話は先日の江口氏の講演の話題に出ていた図像学における構図の継承の話と関連させて考えると面白いと思っている。
  2. 漫符の話ももう少し錬ると象徴の話に関連させられるかも・・・
  3. サブリミナルの章を読んで、ある種の『魔術的』とか『秘教的』と称される絵柄について得心がいった。多分、ある意味、分裂病的な絵柄についても同様の議論が出来そうな気がする。

*1:ネットで購入したい人は竹熊氏のブログアフィリエイトを利用してください。

*2:また、サルまん制作中のブレインストーミングの実践については竹熊氏のブログのこのエントリが詳しい:http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2006/02/post_4821.html